本記事は、WOW WORLDがスポンサーを務めていたラジオ番組『森清華のLife is the journey』の放送内容の一部をテキストでご紹介するものです。
当番組は2025年3月に終了するまで、かわさきエフエム(79.1MHz)にて8年半にわたり放送。パーソナリティの森清華さんが、最前線で活躍されている企業経営者や各界のスペシャリストの“人生の分岐点”から「これからのキャリア、生き方のヒント」を紐解きます。(※文中の組織名、ゲストの方の肩書等は放送当時のものです。)
今回はゲストに、レナ・ジャポン・インスティチュート株式会社の代表取締役・蟹瀬令子さんをお迎えしました。博報堂のコピーライターとしてキャリアを積んだ蟹瀬さんは、独立してクリエイティブ・マーケティング会社の株式会社ケイ・アソシエイツを設立。その後英国の自然派化粧品「ザ・ボディショップ」の日本法人の社長に就任しました。そして7年後に退任し、55歳で現職のスキンケアの会社を起業。70歳の古希を迎えた今なおエネルギッシュに活躍しています。女性やシニアが生きがいを持って働くために大切なことをお聞きしました。
蟹瀬さんのキャリアはコピーライターからスタートしました。女性のコピーライターが少ない時代、仕事と家庭を両立しながら、ときには「書けない」というスランプも経験します。そして、2007年、55歳にしてスキンケア会社のレナ・ジャポン・インスティチュート株式会社を立ち上げました。「心まで明るくなるスキンケア方法」を現在も多くの女性に伝え続けています。
森さんー 55歳で化粧品会社を立ち上げられた経緯を教えていただけますか?
蟹瀬さんー バレリーナを目指していた娘が肌荒れに悩み、相談してきたのがきっかけです。それがザ・ボディショップの社長を退任する時期で、私自身も次のキャリアを考えていたタイミングでした。娘の悩みを聞いて、55歳を迎える自分の肌もどうにかしたいと思い、起業を決意しました。私が目指しているのは、忙しい女性がほんのひと手間をかけることで美しくなれる、そんなスキンケア方法を広めることです。
森さんー 肌がよくなると心もポジティブになれますよね。ご自分の化粧品会社を立ち上げる前から、経営者として歩んでこられた蟹瀬さんですが、最初のキャリアはコピーライターだったそうですね。
蟹瀬さんー 博報堂が10年ぶりに女性コピーライターを採用した年に入社しました。みなさんご存じの「ヨード卵・光」とか、「ムーニー」の「もれないギャザー」などの名前をつけました。
ただ実のところ、最初からコピーライターを目指していた訳ではなかったのです。会社が、私の作文を見て「コピーライターをやりなさい」と言ってくださったのがきっかけです。「言われたからにはやるしかない。適職と思ってもらったものに、まずはチャレンジしてみよう」と思いました。
森さんー コピーライターとしてお仕事をされる中で、大変なことはありましたか?
蟹瀬さんー そうですね。やはり、なかなか思い付かなくて書けなくなるときがあります。そんなときに眞木準(まき じゅん)さんという、コピーライターの先輩からもらったアドバイスが私を支えてくれました。
当時、眞木さんに「書けないんだけど、どうしよう」と相談したら、「え?書けない?コピーが書けないのだったら、もっと書け」と言われまして。当時は原稿用紙に書いていたのですが、「何でもいいから原稿用紙を埋めろ」と言われ、とにかく書くようにしました。そのときの「仕事ができなくなったら仕事をしなさい」という非常に素晴らしいアドバイスが、いつも自分の心の中にあります。
「ああ、もう嫌だな」「自分は力がないからもうここでやめようかな」と思ったときに、「もう一回やってみよう」「もうちょっと仕事してみよう」とあきらめずにやることによって、ここまで生き延びてきたような気がします。
蟹瀬さんが働き始めたころは、現在よりも男性中心の社会でした。その中で働き続けてきた蟹瀬さんは、男性と女性、文化の違いなど多様性を大事にすることや、チャレンジしていくことの大切さを実感します。
森さんー 女性が会社など組織の中で仕事をうまく進めていくために大事なことは何でしょうか?
蟹瀬さんー 女性の母性や柔らかさ、包容力。実はそういったものが企業の中で非常に役立ちますね。組織の中ではよい潤滑油になりますので、活かされるとよいと思います。
一方、博報堂に在職中、ミシガン大学に留学した際、日米の女性の違いを感じたことがありました。アメリカの女性はたとえ自信がなくても、ものすごく自信があるようにふるまう人が多いです。日本の女性でこのような人は少ないと感じますが、組織の中では自信なくふるまうよりも、自信があるように見せることも大切です。
組織の中で自分が日常的に一生懸命やっていると、言葉にしなくても見てくれている人がいます。その人から新しい仕事を任せてくれるチャンスをもらったら、それにチャレンジしていく精神が大事です。
70歳を迎えた今なお、現役で精力的に働いている蟹瀬さんが思う「シニアが働くときに大事なこと」と、「シニアの周りの人に伝えたいこと」とは。
森さんー 人生100年時代に日本のシニア世代の方々が働くうえで、どのようなことを心がけたり大事にしたりするとよいでしょうか?
蟹瀬さんー シニアにとって「きょういく」と「きょうよう」が大事、とよく言われます。「きょういく」とは「今日行く所」。「きょうよう」は「今日用事があること」。することは何でもいいんですよ。仕事とかボランティアとか。毎日何か行動するとそれが自分の励みになり、頭も体もずっと元気でいられる。それがシニア世代だと思います。
シニアだと大事にされすぎることがありますが、「大事にする」というのは「見守ってあげる」ということです。若い人は手出しをせずに見守ってあげる。そうするとシニアは頭や体を動かし、責任を持って取り組みます。それが元気の素になるのです。
そしてシニアと一緒に働く方に知っていただきたいのは、「自分もいずれはシニアになる」ということです。自分がシニアになったときに「あ、こういう風になるんだな」と思いながら見守り、シニアが今まで歩いてきた知識や知恵をしっかり吸い取っていただくといいですね。
シニアの方は若い人に見守られながら、生きている間に自分のできる範囲でやれることをしっかりやっていくのが、これからとても大事なことだと思います。
森さんー 最後に、これから自分の夢を実現しようと考えている方々へ背中を押すメッセージをお願いします。
蟹瀬さんー 自分の夢を叶えたい。その基本となる一番大切なことは、「あなたが幸せになること」です。 そのために働いてそのために生きていますから。常にそこの基軸を忘れなければ、より良い人生の選択をすることが絶対にできると思います。
1秒でも2秒でも幸せになることを考えながら選択することで、きっといい結果が生まれてくる。そう思っています。
『森清華のLife is the journey』
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