本記事は、WOW WORLDがスポンサーを務めていたラジオ番組『森清華のLife is the journey』の放送内容の一部をテキストでご紹介するものです。
当番組は2025年3月に終了するまで、かわさきエフエム(79.1MHz)にて8年半にわたり放送。パーソナリティの森清華さんが、最前線で活躍されている企業経営者や各界のスペシャリストの“人生の分岐点”から「これからのキャリア、生き方のヒント」を紐解きます。(※文中の組織名、ゲストの方の肩書等は放送当時のものです。)
今回はゲストに、株式会社アージング 取締役 小林学さんをお迎えしました。学生時代はホテルの専門学校へ通うも、両親への感謝の思いから卒業後に家業である製本会社を継ぐことを決意します。リーマンショックや新型コロナウイルスの感染拡大など度重なる危機を全社一丸となって乗り越え、現在はオーダーメイドで、オリジナルメニューブック・メニューカバーの製造販売事業を展開。逆境を乗り越えるための視点や、大切にしている思いを伺います。
学生時代にホテルマンを目指していた小林さんですが、これまで支えてくれた両親への感謝から家業を継ぐことを決意します。当時はどのような状況だったのかを伺いました。
森さんー キャリアの原点を教えてください。
小林さんー もともと両親が製本会社を経営していましたので、子供の頃から常に両親やスタッフの姿を見て育ちました。中でも、人に対する気遣いなどは幼心にもよく覚えています。
森さんー そのような姿を見ながら、「家業を継いでいくんだ」という思いはあったのでしょうか?
小林さんー いえ、若い頃は、まだそういう思いは強くなかったのです。学生の頃はホテルマンになりたいと思い、ホテルの専門学校に通っていました。しかし、これまで両親の世話になっていたことに気がつき、卒業とともに両親の会社に入社しました。
森さんー 実際に会社を継ぎ、経営スタートとなったわけですけれども、受け継いだ頃の会社はどのような事業を強みとしていたのでしょうか?
小林さんー 製本業が主だったので、お客様からのオーダーに対して、より正確に本を作り上げることが全てでしたね。あとは、時間がなくてもきちんとオーダー通りに仕上げること。そこに尽きました。
森さんー 当時、会社のみなさんは、ご自身よりも年齢が上だったと思います。ベテラン職人さんとの信頼関係は、どのように築かれたのでしょうか?
小林さんー やはり最初は受け入れてもらえないことが多かったのですけれど、スポーツをしていた経験から、職人さんを先輩として接するようにしました。素直に話を聞いているといろいろと教えてもらい、かわいがられるようになりまして、協力会社にも紹介してもらいましたね。職人気質の方が多かったので、厳しくもやさしく指導してもらいました。
リーマンショックの影響で会社が大打撃を受けた際は、全社員一丸となって危機を乗り越えます。その後、国際ホテル・レストラン・ショー(※)への出展を機に、レストランだけでなくホテルチェーンのお客様も増え、事業が新たな展開を迎えます。
※国際ホテル・レストラン・ショー:ヒト・モノ・情報の交流と発信を通じて、サービス産業の活性化に貢献するホスピタリティとフードサービスの商談専門展。
森さんー 今振り返ってみると、分岐点はどのようなときだったのでしょうか?
小林さんー 分岐点は二つあります。一つ目の分岐点は、2008年のリーマンショックです。その頃、我々は一般企業の販促物製作がメインだったので、取引先が販促物の予算を削るようになり大打撃を受けました。製本業も続けていましたが、こちらも電子化が進んでいたため、需要が減りつつあったのです。そこで、「社内で製造でき、下請けではなく直接お客様に提供できるものは何だろう」と社内で話し合い、当時は量産品の使用が一般的だったメニューカバーを、オリジナルで製造することにしました。
森さんー それが今の事業につながっていくのですね。
小林さんー そうですね。我々は下請けからの始まりなので、一般企業へ直接交渉するのはありえない状況でした。けれども、それでは事業を続けていけません。居酒屋や高級店などを役職関係なく全社員で歩き回り、メニューカバーの見本を配りました。お客様のニーズを丁寧に聴きながら見本を作る。それを真摯に毎日続けたことが、今につながっています。
森さんー やはり一つひとつ積み重ねていくことが大事なのですね。もう一つの分岐点は、どのようなタイミングだったのでしょうか?
小林さんー 2015年から、東京ビッグサイトで開催されている商談専門の展示会「国際ホテル・レストラン・ショー」に出展するようになったことが、二つ目の分岐点です。出展を機に、レストラン以外にホテルチェーンからのニーズも増えました。メニューブックだけではなく、ホテルのお客様がVIPルームで使う備品なども手掛けるようになり、仕事の幅が広がりました。
社名に込めた想いを胸に取り組みを作り続けていく中、コロナ禍で再び会社の危機が訪れます。大変なときだからこそ、お客様を大切にしながら切り抜けた小林さんに、逆境を乗り越えるために大切なことを伺いました。
森さんー アージングという社名には、どのような想いが込められているのでしょうか?
小林さんー 「AURZING」は、驚きと感動という意味をもつ造語です。メニューブックをお客様が手に取り触れたときに、驚きと感動を味わってもらいたいという想いを込めました。お店の空間価値を高め、最大限に魅力を生かすことを重視し、製作しています。
森さんー ここ1~2年では、コロナ禍の影響も大きかったと思いますが、どのようなことを感じていらっしゃいますか?
小林さんー 飲食のお客様をメインに商売していましたので、緊急事態宣言が発動された後、売り上げが半減してしまいました。ただ、そこで動くのを止めてしまうと、お客様に忘れられてしまいます。お客様にとっても緊急事態だからこそ、今恩返しできることは何だろうかということを軸に、メニュー表以外にもご提案できるものを編み出しました。販売する際も、お客様にとって少しでも力になれるよう熱いメッセージを込めて、さまざまな形でご提供させていただきました。
森さんー リーマンショックやコロナ禍など、逆境を乗り越える上で「大切だな、役立ったな」と感じたのは、どのようなことでしょうか?
小林さんー 世間では泥臭いと言われるかもしれませんが、地道に努力をし続けることです。営業でも、1~2回訪問してもお客様がこちらを全く振り向いてくれないことは多々あります。それでも諦めず、時には10回ぐらい訪問することで、話を聞いていただけることもあります。やはり諦めないことが大切ですね。ずっと信じて続けていけば、必ず道は開けるしチャンスはあるので、そこを見過ごさないことです。
森さんー これからどのようなことに挑戦していきたいと思われますか?
小林さんー 日本中のレストランやホテルのお客様に、我々のメニューカバーをご利用いただき、さらには世界へと広げたいですね。ぜひ多くの皆様に驚きと感動を体感してもらえればと思っています。
森さんー これから自分の夢を実現しようと考えている方々へ、背中を押すメッセージをお願いいたします。
小林さんー 「温故知新」という言葉を送りたいです。弊社では、製本業で培われてきた職人さんの知識や知恵を生かしながら、目の前のお客様のご要望を取り入れ、形にしています。私たちはそれをさらにブラッシュアップして世に出していますので、まさに温故知新という言葉が会社の軸になっていると感じています。
『森清華のLife is the journey』
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