取り組み・活動

キャリア・生き方
2022年08月31日

数学者一筋の世界を広げたファッションデザイナーとの出会い。心を解放し人生の智慧を次世代へ

WOW WORLDがスポンサーを務める『森清華のLife is the journey』(かわさきエフエム)は、パーソナリティの森清華さんが、最前線で活躍されている企業経営者や各界のスペシャリストの“人生の分岐点”から、「これからのキャリア、生き方のヒント」を紐解いていくラジオ番組です。今回はゲストに、関西学院大学 教授 井垣伸子さんをお迎えしました。数学者として大学で教壇に立ちながら研究に没頭する中、世界的に活躍するファッションデザイナーと出会い、人生が一変。自分の心を解放することの素晴らしさを知りボランティア活動に取り組みます。数学者、そしてジェネラティビティ(次世代への継承)の研究者として精力的に取り組む井垣さんに、生きていく上で大切にしている考え方を伺いました。

※『森清華のLife is the journey』は、かわさきエフエム(79.1MHz)にて毎週水曜日 午後9時~9時30分オンエア。このコーナーでは、その中から月に1本、当社が選定した回を一部抜粋してテキストでご紹介します。

【数学者としての歩み】高校の先生に憧れて数学者の道へ。数学の研究と指導に没頭する日々

子どもの頃から算数が好きだった井垣さんは、高校の先生との出会いをきっかけに数学者の道に進みます。津田塾大学で学んだ後、名古屋商科大学、帝塚山大学での教職を経て、現在は関西学院大学で教壇に立っています。

森さん なぜ数学者の道を歩もうと思われたのでしょうか?

井垣さん 小学校時代から算数が好きで、特に文章題を一人でコツコツ解くのが大好きでした。数学者になろうと思ったきっかけは、高校の担任との出会いです。数学の先生で、方程式などを一行一行ピシッと読み上げるのがとてもかっこよく感じ、すっかりそのスタイルにはまりました。先生は数学の研究もされていて、大学の先生方と共著で書籍を出されていました。当時私は、内容がよく分からないながらもワクワクしながら本を眺めていましたね。その後、津田塾大学の数学科で4年学んだ後、大学院の修士・博士課程に進み、合計9年間学びました。

森さん それでは27歳から社会人としてスタートされたのですね。

井垣さん はい、名古屋商科大学の商学部で教壇に立ったのがスタートです。数学者は、理系大学の数学科での採用枠が少なく、文系流れという形での就職でした。学長さんから「うちは商学部だから、純粋数学ではなく、もっとビジネスに役立つ内容を教えてほしい」と言われ、半年間アメリカのペンシルバニア大学に留学し、応用数学を学ばせていただきました。応用数学とは、日常のディシジョン・サイエンスやオペレーションズ・リサーチといった、最適化を解く理論です。今は関西学院大学総合政策学部で、数学と意思決定科学という応用数学を教えています。

【人生の分岐点】世界的に活躍しているファッションデザイナーに衝撃を受け、ボランティア活動へ

数学一筋に歩む中、ファッションデザイナーとの出会いが人生の分岐点に。自分の心を解放する生き方に目覚め、アメリカで人生初のボランティア活動に取り組みます。

森さん 数学者の道を歩まれていく中、今振り返ってみると、分岐点はどのようなときだったのでしょうか?

井垣さん 人生の分岐点は、すごい数学者に出会ったなどではなく、ダイアナ元妃やサッチャー元首相、スウェーデン皇室関係の方などのドレスをデザインしている、ファッションデザイナーの烏丸軍雪さんに出会ったことです。人生最大の衝撃でした。実際にお会いしてみると、「クリエイティビティがそこに立っている!」という感じで、今まで出会ったどの方とも全く違う印象でした。自分の感性をここまで広げていいのだという、自由さやオリジナリティを感じ、私の感性の扉が一気に開いた気がしました。あまりに強い印象を受けたので、その後1カ月ぐらい脳みそがしびれたような状態が続きましたね。

森さん この出会いから、ご自身の気持ちや行動がどのように変わったのでしょうか?

井垣さん 数学ばかりではなく、「自分の直感のアンテナに引っかかるものは挑戦していこう」と、より自由な気持ちになりました。まず取り組んだのは、人生初のボランティア活動です。アメリカにいるとき、日本の伝統芸能をシアトルの人に紹介しようと思い、能のワークショップをおこないました。現地シアトルで出会ったプロデューサーの助けもあり、小学校や幼稚園、一般の美術館や図書館など、10カ所以上で開催し大成功したのです。参加者の皆さんから、「もっと本格的なものが見たい。ワークショップだけじゃ物足りない」と言われましてね。プロデューサーと相談してプロジェクトを組み、NPOを立ち上げて約2,000万円の予算をかき集め、シアトルで本格的な能の公演を実施しました。

【次世代への継承】人生の先輩12人のメッセージを著書に込めて、次の世代に伝える

関西学院大学では、数学だけでなく、ジェネラティビティ(次世代への継承)の研究にも精力的に取り組み、2022年7月に本を出版。著書を通じて伝えたい想いを伺いました。

森さん 最近、『50代からの生き方のカタチ―妹たちへ―』という著書を出版されました。こちらはどういった本なのでしょうか?

井垣さん この本は、関西学院大学に私が立ち上げた「ジェネラティビティ研究センター」の活動の一環として出版しました。「ジェネラティビティ」という単語は、心理学者のエリクソンが作った造語でして、Generate(生み出す)とGeneration(世代)を掛け合わせ、次世代につなぐということを意味した言葉です。人生100年時代と言われている中、50代の方たちは、「この先、これでいいのだろうか?私が本当にやりたかったことは何かしら?」などと考え直すタイミングに来ていると思います。そういう方々に向けて、人生の先輩からのメッセージを届けたいと思い本を作ったのです。漫画「ベルサイユのバラ」作者の池田理代子さん、男女機会均等法の立役者である赤松良子さん、東京タワーやベイブリッジの照明デザインを手掛けた石井幹子さんなど、著名な方12名に取材しました。

森さん とても興味深いご本ですね。よろしければ、どなたかお一人だけでもご紹介いただけますか?

井垣さん では、舞踏家で振付師の名倉加代子先生をご紹介しますね。私は以前、名倉先生自ら教えてくださるダンスのシニアクラスのレッスンを受けたことがあり、今回そのご縁で取材させていただきました。名倉先生からは、「絶対にやりたいことを諦めない。これからの中で、あなたは今日が一番若いのだから。いつだって今が一番良いんだよ」と、取材中も涙が出そうになるくらい感動的なメッセージをいただきました。本の中には、読み手である「妹たち」へのメッセージが詰まっています。人生の先輩方からの生きるヒントを、ぜひ次の世代の皆さんに渡していきたいと思います。

【背中を押すメッセージ】答えはいつも自分の中に

森さん これから自分の夢を実現しようと考えている方々へ、背中を押すメッセージをお願いいたします。

井垣さん 「答えはいつも自分の中に」というメッセージを差し上げたいと思います。人は悩みを抱えたとき、セミナーに出かけたり、さまざまな人に会ったりと、答えを外に求めることが多いのですが、本当の答えは自分が持っています。人生で大切なのは、自分を信じることです。私自身、自分の直感を信じて「思う存分自分を生きる」ということを大事にしたいと思っています。どうぞ、悩んだときは自らを信じ、自分の中を探してみてください。

『森清華のLife is the journey』
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