取り組み・活動

キャリア・生き方
2023年09月22日

新ジャンル「缶づめ料理研究家」を確立。美大を経て、未経験で食の世界へ

WOW WORLDがスポンサーを務める『森清華のLife is the journey』(かわさきエフエム)は、パーソナリティの森清華さんが、最前線で活躍されている企業経営者や各界のスペシャリストの“人生の分岐点”から、「これからのキャリア、生き方のヒント」を紐解いていくラジオ番組です。

今回はゲストに、フードスタイリスト 黒瀬佐紀子さんをお迎えしました。美術大学でジュエリー職人の道を志す中、「食」の世界に憧れを抱きます。経験ゼロから、どのような仕事もチャンスと捉えて自ら道を切り開き、缶詰にひと手間加える「缶づめ料理」の研究家に。缶詰ブームの先駆けともいえるレシピ本「缶つま」を出版し、現在テレビや雑誌でも幅広く活躍されている黒瀬さんに、仕事に対する情熱の源泉を伺いました。

※『森清華のLife is the journey』は、かわさきエフエム(79.1MHz)にて毎週水曜日 午後9時~9時30分オンエア。このコーナーでは、その中から月に1本、当社が選定した回を一部抜粋してテキストでご紹介します。

【キャリアのスタート】美大生がフードスタイリストになるまでの道のり

大学時代、ジュエリー制作を学ぶ中で、「食」に魅了された黒瀬さん。就職活動で食業界を目指すも、未経験という理由で採用されず大きな壁にぶつかります。

森さんー 黒瀬さんは、美術大学のご出身だそうですね。美大を目指したのは、どのような背景があったのでしょうか。

黒瀬さん ものづくり、特に手先を使って小さいモノを作るのが好きで、漠然と美大に行けばいいのではないかと思い、武蔵野美術大学に入学しました。大学では工芸工業デザイン科で金属を専攻し、ジュエリー制作をしていました。

森さん 卒業後は、どのような道を進もうと考えられていましたか?

黒瀬さん 実は、宝石より食べ物を仕事にしたいという強い思いがありました。在学中、みんなで飲んだり食べたりすることが多く、みんなにごはんをふるまうことが一番楽しかったのです。これまで学んできたデザイン技術を生かして、食業界に行きたいと考えるようになりました。

また、将来は海外に行き、いろいろな国の料理を食べてみたいという夢がありました。仕事をしてお金を貯めてから行こうと思っていたのですが、そのことを父に話したら、「行くならすぐ行く。ただし語学留学はだめ。何かをして帰ってきなさい」と言われたのです。英語が全然できなかったこともあり、このタイミングで食に転向するのは難しいという気持ちもあって、アート専攻で海外留学をすることにしました。

森さん イギリスの大学に留学されたそうですね。

黒瀬さん はい。ただ、行った瞬間から「やっぱり食のほうがいい」と思いました(笑)。父との約束で大学ではしっかり学んで卒業すると決めていましたが、食べ物のことばかり考えていましたね。ロンドンにはさまざまな国籍の人が住んでいるので、それぞれのコミュニティエリアに行って料理を食べてみたり、どのような洋服を着ているのか観察してみたりと、街探検をしながら過ごしました。

森さん 留学を終えて、26歳で帰国されていますが、当時の日本はどのような時代でしたでしょうか。

黒瀬さん 当時は、就職氷河期真っ只中でした。仕事をしなきゃいけないと焦り、多くの食関連の会社に応募しました。募集がない会社にもポートフォリオを持っていき、「こういうことを学んできたのですが、食の世界で何かアート的なことができないでしょうか」と掛け合ってみたものの、全滅。その時の私は26歳で未経験だったため、「こんな時代にあなたを雇って育てようという会社はないと思いますよ」と言われてしまいました。

結局、食に関係する会社とのご縁がなくて、デザイン会社に入社します。テレビ局に入っているデザイン室で、フリップを作る仕事をしていました。それでも食の世界を諦めきれず、2年目の契約更新のときに上司に転職の相談をしたところ、後押しをされ退職しました。

森さん そこからどのように食の世界へ入っていくのでしょうか?

黒瀬さん なぜあの時、食の世界で働けなかったのかを考えたときに、経験が足りなかったからだということを再認識しました。

まずは経験をつくるために、飲食店のアルバイトから始めました。フードコーディネーター講座にも通いながら食について学び、料理家の撮影アシスタント、友人とのフードイベント開催など、少しずつ活動を広げていく中である転機が訪れます。


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