30周年の節目で振り返る、これまでの成長と変化。現状に安住せず、「人と技術」の両輪で進み続ける
当社、株式会社WOW WORLDは2025年4月に創立30周年を迎えました。1995年に株式会社エイジアとして WEBサイト制作からスタートし、業務システムの受託開発と自社開発メール配信システム「WEBCAS(ウェブキャス)」の事業へと重心を移したのち、現代表・美濃和男への社長交代(2009年4月)を機に「WEBCAS」部門に事業を集中。同製品をクラウド・ソリューションとしてシリーズ化し、ラインナップを拡充してきました。2021年7月に社名を WOW WORLDに変更し、現在に至ります。
今回、創立30周年という大きな節目に当たり、代表取締役社長・美濃和男がこれまでを振り返り、クライアント企業・パートナー企業・社員に対する思いと今後の戦略を語りました。本記事ではその内容をご紹介します。
30周年を迎えた今の率直な感想を教えてください
変化や競争の激しいインターネット系ITソリューションの世界で、社歴30年を数える会社は一握り。ここまで長く続けられたことは素直にうれしいです。
現在の会社の成長を、どのように振り返りますか?
現在は売上高10%前後の成長で安定した収益力もありますが、2005年の旧マザーズ(現グロース)上場の翌年から3年間はリーマンショックなどの影響で連続の赤字、あわや上場廃止という危機にも直面しました。私が社長に就任したのはその危機のさなかで、上場廃止は何とか回避し、年度内にぎりぎり黒字に回復させ、それ以来黒字が続いています。しかし、変化の激しいこの業界では一瞬で安定が失われる可能性もあり、現状に安住してはいけないと改めて思います。
社長に就任してから、最も印象に残っている出来事や転機はありますか?
3つあります。1つ目は、就任後すぐにクラウド事業への傾斜を決定したこと、2つ目は業務システムの受託開発事業の廃止にも踏み切ったこと、そして3つ目は新卒採用を始めたことです。
1.当時の会社が展開していたメール配信システム「WEBCAS」は、ユーザー企業の環境にシステムを個別に構築するオンプレミス型がほとんどで、システムのライセンス料を数百万円単位で販売して稼ぐ仕組みでした。メール配信システムのニーズがまだあまり顕在化しておらず、営業に時間がかかる商材である上に、リーマンショックの影響で企業の設備投資が抑制されたことから、売上の見通しは非常に厳しいものでした。そこで、将来を見据えて思い切ってクラウド型サービスへの移行を決断しました。
2.業務システムの受託開発は売上の4割を占めていましたが、過当競争のなか、裁量労働制をとって残業代なしで徹夜作業を強いるような運営で、社員の犠牲の上に利益を出す仕組みになっていました。そのため、社長に就任したらなるべく早い段階で撤退しようと考えていたのですが、クラウド事業を立ち上げたばかりの不安定な状況下ではなかなか撤退に踏み切れず、先延ばしにする形になってしまいました。
そうしたなか、社長に就任して4~5か月が経ったころに、受託開発担当の社員から「自分たちが社長の子供だったとしてもこの事業を続けますか」という厳しい一言での直訴を受け、やはりすぐにでもやめなければと思い直し、撤退に踏み切りました。
3.当時は中途採用のみをおこなっており、社員の平均年齢は30代後半から40代手前でした。組織の活性化を図り、年齢構成のバランスを保つためには新卒採用の導入が必要だと考え始め、クラウド事業開始から3年ほど経ち契約が徐々に積み上がって安定してきたところで新卒採用を開始し、社員の若返りと社風の刷新を図っていきました。
女性比率は社長就任当時15%未満でした。意図的に比率を上げようとしたわけではないのですが、新卒採用で優秀な人材を採用していったところ、結果的に男女比のバランスが均等になっていき、2025年3月末時点では女性比率が53.9%と、日本のIT業界平均の約30%を大幅に上回るまでになりました。そして、会社として女性はもちろん、すべての社員が健全なライフワークバランスを保った働き方ができるようにさまざまな制度を整備していきました。産休・育休を経て復職したいと言ってくれる社員も多くなり、現在の育休からの復帰率は100%となっています。
社名変更、経営理念の変更によって社外・社内にどのような変化がありましたか?
旧社名や理念は、いま会社が目指していることとはズレが生じてしまっていたので、グループ全社で話し合って現社名に変更し、あわせて経営理念を再定義しました。これにより、新たにグループに加わる企業を含め、グループの全社員に向かって社名や理念を通して思いを語り、共有できるようになりました。
経営理念を具現化するクレドの作成においては、経営メンバーはあえて介入せず、若手社員からなる選抜メンバーに一任しました。こうした経緯もあって、経営理念やクレドを自分事として実践してもらえていると感じています。
社外でも、社名や理念・クレドについて明確に語れるようになり、決定の経緯も含めて関心を持って受け止めてもらえているように思います。
業界全体の変化を踏まえ、技術革新や市場の変化に対応するために、どのような取り組みを進めていますか?
「人と技術の力で、驚きがあふれるセカイを」という経営理念がまさにそれを表現しています。次々と新しい競合が現れる業界ですが、当社のクライアント企業は、手厚い人手のサポートと、30年の歴史で培ってきた高い技術・品質を評価してくださっています。今後も「人と技術の力」を磨き続け、それに価値を感じてくれる顧客に相応の対価で買っていただくという戦略を貫いていく考えです。
クライアント企業、パートナー企業、社員に対する思いを教えてください。
クライアント企業に対して
LTV (ライフタイムバリュー=取引単位ではなく各顧客との関係全体を通して得られる利益)の最大化を図るためのパートナーとして、クライアント企業に愛着を抱いてくれるお客様(エンドユーザー)を増やす手助けをしたい、というのが根底にある思いです。それを実現するための手段として、有用なシステムやソリューションを提供し続けていきたいと考えています。
パートナー企業に対して
先ほど説明した戦略のもと、質の高いサービスを適正な価格で提供していくことに、共に邁進していきたいと考えています。当社の提供するシステムやソリューションが、パートナー企業の顧客満足度向上にもつながることが、何よりの喜びです。
社員に対して
「自律」を大切にし、そのうえで会社に価値を感じてもらいたいというのが強い思いです。会社と社員はパートナー。パートナーを自律的に選び、パートナーとの協働のために互いが思考し行動していくことでこそ、高い成果と成長を享受できると考えています。パートナーとして価値を感じ続けられない関係であれば、離れるのも自然です。自律した関係として強いパートナーシップが続くならそれは素晴らしいことですし、その上で「一緒に60周年を目指す」という思いでつながることができればうれしいことです。
今後、どのような価値をクライアント企業や社会に提供していくことを目指していますか?
今後は、顧客行動データやアンケート結果の分析をもとに「顧客に合わせた施策」を効率よく打ち出していけるようなシステムの提供に重点を置きます。それにより、マーケティングメールの大量配信のような「数撃てば当たる」式の戦術からの価値転換を促し、LTV最大化を後押ししていきたいと考えています。
さらには、顧客企業とそのお客様を結ぶ複数のインターネットチャネルを単一システム上で統括的に運用できるようにするサービスを作り、デファクトスタンダードとすることを目指します。
マルチチャネルの顧客コミュニケーションを実現しようと思った場合、現状では企業自身がメールやLINEなどのチャネルごとに個別にサービスを契約して環境を整備していくのが一般的な進め方ですが、単一サービスの契約と運用で全チャネルをまかなえるようになれば、コミュニケーションが格段に円滑になり、LTVの最大化につながります。これはマルチチャネルサービスの行き着く先の一つの形だと思います。
おわりに
創業から30年。当社は、数多くの支援と信頼に支えられながら歩みを続けてきました。
本記事で紹介した内容は、その道のりを振り返るとともに、次の未来への一歩でもあります。
節目となるこの年に、これまで当社を支えてくださったすべての皆さまに心より御礼申し上げます。
そしてこれからも、「人と技術の力」で、驚きがあふれるセカイを創り続けてまいります。